近視抑制治療について

オルソケラトロジー

オルソケラトロジーとは

特殊な形のハードコンタクトレンズ(オルソケラトロジーレンズ、図1)の装用によって角膜(黒目)の形状を意図的に変化させ、近視などの矯正をはかる治療法のことです。Orthokeratology =ortho(正常化)+kerato(角膜)+logy(研究、学問)、直訳すると「角膜矯正学」「角膜矯正療法」という日本語になりますが、現在は「オルソケラトロジー」という呼び名が一般的です。省略して「オルソK」または「OK」とも呼んでいます。以降、「OK」と呼びます。

図1:オルソケラトロジーレンズ

日本国内で認可を受けているのは近視を対象としたOKレンズだけです。中央を角膜表面のカーブより平らにしたOKレンズを寝ている間に装用し(図2)、角膜の表面を平らに(フラット化)してピントをずらすことで近視を一時的に矯正します。翌朝OKレンズをはずした後も矯正された角膜の形は一定時間保たれるため、これを毎日続けることによって日中はレンズなしでも良好な視力を保つことができるようになります(図3)。

図2:オルソケラトロジー開始前の角膜(断面図)

図3:オルソケラトロジー後の角膜(断面図)

2017年までは「原則20歳以上」に制限されていましたが、国内外の研究で未成年への有効性が確認されたとして、日本コンタクトレンズ学会が2017年末にガイドラインを改正し、「慎重に処方すること」を条件に未成年での使用を認めるようになりました。
オルソケラトロジーの利点は以下の通りです。

  • OKレンズの変更により見え方の調整ができること、つまり可逆的であることです。
  • 日中に装用するコンタクトレンズのようにゴミが入って痛くなったり、レンズが外れたりする心配がありません。また、日中の目薬の使用が可能です。
  • レーザー手術のように角膜を削らなくて済み、装用をやめると元に戻るので、眼の手術に抵抗感がある人に向いています。
  • 夜間装用なので、親が管理できます。スポーツやバレエなどの習い事をしているお子さんに便利です。
  • 仕事柄、眼鏡やコンタクトレンズのできない人にも便利です。
  • 近視の進行を抑えられたという研究報告が欧米、東南アジア、日本で多数あります。OKと普通の眼鏡とを比較して2年間で近視の進行が平均43%(24~63%)抑制されたという結果です。
  • 一方、以下のような欠点もあります。
  • ほぼ毎晩、OKレンズを装用する必要があります。中止すると近視に戻ります。
  • 強い近視や乱視の人には使えない場合があります。
  • OKに独自の各種合併症があります。レンズを清潔に保ち、定期検診に欠かさず行くなど適切な管理が必要です。レンズが汚れると、最悪の場合は失明に至る「感染性角膜潰瘍」にもかかることがあるので注意が必要です。重い障害を起こす危険性も理解したうえで始めるようにしましょう。
  • 医療保険が使えないため自由診療です。費用は一般的に最初の1年間は両眼で12万~38万円ほどです。

自由診療のためOKを行っている眼科施設は限られています。OKを希望したい場合は、まずはかかりつけ(ご近所)の眼科専門医に相談して信頼のおける眼科を紹介してもらってください。

【執筆者】柿田哲彦(柿田眼科 院長)