治療用コンタクトレンズ

強膜レンズ

強膜レンズとは?

レンズの大きさが角膜(黒目)よりも大きく、強膜(白目)でレンズを支えるタイプのコンタクトレンズです。角膜をドーム状に覆うような形状をしているため、角膜にレンズが触れることなく視力の矯正が可能です。レンズには「ラージ強膜レンズ」と「ミニ強膜レンズ」があり、目の状態に合わせて、患者さんに適したレンズを選択します。

図:強膜レンズ装用時の模式図

写真:各レンズの大きさの比較

  • 左)ハードレンズ(直径8~12mm)
  • 中央)ミニ強膜レンズ(直径15mm~18.0mm以下)
  • 右)ラージ強膜レンズ(直径18mm以上)
利点 欠点
ラージ強膜レンズ 角膜の大きな不整(凸凹)に対応可能
  • 白目の不整に影響されやすい
  • 白目や瞼に癒着があると難しい
  • 目の開きが悪い場合は装用困難
ミニ強膜レンズ 白目の不整や乱視の影響を受けにくい 角膜の不整(凸凹)が大きい場合は白目と接触する部分に圧力がかかりやすく装用感が悪くなる


【写真】レンズが強膜に接している実際の写真

強膜レンズの特徴(利点)

  • 強膜(白目)は知覚が鈍いため、硬いレンズが目に触れても異物感はほとんどありません。
  • レンズと角膜の間に涙液が溜まるため、角膜が弱い方やドライアイがひどい方にも有効です。(この効果を「リキッドバンデージ」といいます)
  • ハードレンズなので円錐角膜や角膜移植後、角膜の怪我の後などの角膜不正乱視(歪な乱視)に対しても良好な矯正効果があります。
  • 通常のハードレンズよりも大きいため、ずれたり外れたりすることはまずありません。そのためスポーツをする方に向いています。

適応症例

  • 重症ドライアイ
  • 眼表面疾患(角膜輪部機能不全、スティーブンスジョンソン症候群など)
  • 円錐角膜や角膜不正乱視(特にハードコンタクトレンズが使えない進行例)
  • 兎眼(目が閉じられない)のために角膜障害がある方

処方の流れ

  • 検査・診察にて目の状態の把握します
  • テストレンズを装着してフィッティングの確認をします
  • 実際の装用感を試していただき視力検査などを行います
  • 長時間装着(3時間程度)して問題がないかを確認します
  • レンズを注文します(納期はおよそ1ヶ月程度です)
  • 到着したレンズで再度検査・診察を行い、問題がなければレンズをお渡しします

レンズの使用について

レンズの着脱(付け外し)について

ハードレンズやソフトレンズとは着脱の方法が異なります。スポイトのような特殊な器具を用いて行うため練習が必要です。またレンズが大きいため、患者様の中にはレンズの着脱にかなりの練習時間が必要な方もいらっしゃいます。そのためレンズを安全に着脱できるかを確認してからお渡しをします。

レンズの素材と耐久性、日常のケア

素材や耐久性については通常のハードレンズと同じです。レンズがどのくらい酸素を通すかを示す酸素透過性についても同レベルです。また、日常のケアもハードコンタクトレンズと同様に行っていただければ結構です。

装用時間

最初は、馴れるまでは少ない時間から開始をします。徐々に、慣れてくると起床してから夜寝るまで一日を通して装用が可能です。ただし、角膜の大切な細胞のことを考慮すると、必要な時間のみの装用にしておく方がベターです。

また、強膜レンズはレンズと目(角膜)の間に涙液が溜まる構造になっていますので、長時間装用しているとメヤニなどの不純物がその隙間に入り、視界が白っぽく霞んでくることがあります。そのような場合はレンズを外して汚れを洗い流すことで、またきれいに見えるようになります。

費用

保険診療が適応にならないため、レンズ代・処方・診察料が自費診療になります。
処方を行っている近くの医療機関へお問い合わせ下さい。

【執筆者】中村友昭(医療法人REC 名古屋アイクリニック 院長)