治療用コンタクトレンズ

円錐角膜用レンズ

円錐角膜と非球面ハードコンタクトレンズ

円錐角膜

【図1 円錐角膜】
円錐角膜は、10代に発症する角膜中央部が変形・突出してくる角膜形状異常疾患。

円錐角膜は、10代に発症する角膜中央部が円錐状に変形してくる角膜形状異常疾患です(図1)。初期の頃は眼鏡やソフトコンタクトレンズで屈折矯正できますが、進行してくると視力補正が不良となり、主にハードコンタクトレンズによる不正乱視の矯正が必要となります。角膜の歪みが小さい間は、通常の球面ハードコンタクトレンズでフィッティングできますが、進行例では、レンズ内面に円錐角膜形状を反映させた非球面デザインのレンズが使用されます。

図2は円錐角膜のカラーコードマップで赤い部分が角膜曲率の小さい部分で、緑の部分は曲率が大きい部分になります。こうした進行した円錐角膜に通常の球面ハードコンタクトレンズを処方しても、上手くフィットせず、すぐ脱落してしまうため、図3のように円錐角膜形状をレンズ内面に反映させた各種ハードコンタクトレンズが研究・市販化されています。図4はその中でも最もポピュラーな全方向に一律な非球面性(離心率)を与えた円錐角膜用非球面ハードコンタクトレンズで、球面レンズ(左)から非球面レンズに変えることにより、フィッティングが改善していることが判ります。

円錐角膜

【図2 円錐角膜のカラーコードマップ】
赤い部分が角膜曲率の小さい部分で、緑の部分は曲率が大きい部分。

円錐角膜

【図3 内面非球面ハードコンタクトレンズ(プロトタイプ)】

図2の円錐角膜形状を内面カーブデザインに反映させた内面非球面ハードコンタクトレンズ。これは円錐角膜形状を縦横4方向で曲率を変えたプロトタイプである。

円錐角膜
【図4 円錐角膜用非球面ハードコンタクトレンズ】

円錐角膜102眼の非球面性(離心率)を計算し、ハードコンタクトレンズ内面カーブに反映させた特殊レンズ。円錐角膜用非球面、多段階レンズ共に、ほぼこうしたデザイン手法を用い、その後トライアンドエラーでレンズデザインを完成させていくことが多い。図下方左の通常球面レンズから図下方右の非球面レンズへ変えることにより、フィッティングが改善していることが判る。

ピギーバックレンズシステム

円錐角膜といっても対象的な円錐状に角膜形状変化するわけでもなく、実際の角膜曲面は不整な形状である。従って、たとえ個々の円錐角膜形状を反映させたハードコンタクトレンズを処方したとしても、図5のように角膜中央部、周辺部にキズができ、コンタクトレンズが装用できなくなることも多い。こうした例にはハードコンタクトレンズから円錐角膜局所への圧力分散を図るため、ハードコンタクトレンズの下に、ショックアブソーバーとしてのソフトコンタクトレンズを処方することがあり、これをピギーバックレンズシステムという(図6)。通常、やわらかく薄い1Dayの使い捨てソフトコンタクトレンズを流用することが多く、処方医の裁量のもとに行われる視力補正方法なので、主治医によく説明を求めインフォームドコンセントを得ることが大切である。

この他、強角膜レンズを円錐角膜に用い、角膜局所への圧力分散を図ることもある(強角膜レンズの項を参照)。

円錐角膜
【図5 円錐角膜のハードコンタクトレンズ不耐症例】

円錐角膜形状はイレギュラーな曲面であるので、非球面ハードコンタクトレンズをフィットさせても角膜中央部や周辺部にキズができることがある。

円錐角膜
【図6 ピギーバックレンズシステム】

円錐角膜にソフトコンタクトレンズとハードコンタクトレンズを重ねて処方したところ。角膜のキズは改善し、コンタクトレンズ装用可能となるケースが多い。

【執筆者】佐野 研二(あすみが丘佐野眼科 院長)