治療用コンタクトレンズ

重症ドライアイ

角膜不正乱視矯正とは(重症ドライアイ)

角膜不正乱視は,角膜(黒目)の表面が滑らかな球面(正確には非球面)ではなく,不正な形状を呈した状態をいいます.その代表的なものが「円錐角膜」や「角膜移植術後眼」です.

しかし,スチーブンス・ジョンソン症候群(SJS: Stevens Johnson Syndrome)(図1)や眼類天疱瘡(OCP:ocular cicatricial pemphigoid)(図2),移植片対宿主病(GVHD:graft versus host disease)(図3),シェーグレン症候群(SS: Sjogren’s syndrome)(図4)などの重症なドライアイでも角膜の表面は不正になります.

図1.スチーブンス・ジョンソン症候群(SJS: Stevens Johnson Syndrome)
図1.スチーブンス・ジョンソン症候群(SJS: Stevens Johnson Syndrome)

角膜表面の結膜化,新生血管,炎症と瘢痕化による角膜混濁.
眼瞼縁の角化と睫毛乱生(左)と瞼球癒着(右)

図2.眼類天疱瘡(OCP:ocular cicatricial pemphigoid)
図2.眼類天疱瘡(OCP:ocular cicatricial pemphigoid)

ドライアイ(乾性角結膜炎)(左)と瘢痕性角結膜炎(瞼球癒着)(右)

図3.移植片対宿主病(GVHD:graft versus host disease)
図3.移植片対宿主病(GVHD:graft versus host disease)

ドライアイと瘢痕性角結膜炎(図は無し)

図4.シェーグレン症候群(SS: Sjogren’s syndrome)
図4.シェーグレン症候群(SS: Sjogren’s syndrome)(角膜(中央)

角膜(図中央):フルオレセイン染色,結膜(図左右):リサミングリーン染色.涙液分泌は極端に低下し,乾性角結膜炎を呈す.

前3者のSJS,OCP,GVHDの角膜表面は,炎症により結膜化(角膜の細胞が結膜の細胞に置き換わる)し,新生血管が侵入し,瘢痕化を伴い角膜表面は不正を呈すとともに混濁し視力の低下をきたします.SSの眼表面は,瘢痕化は来しませんが,障害は涙腺にあるため涙液の分泌は極端に低下し,角結膜は扁平上皮化生(squamous metaplasia)を呈し,乾性角結膜炎(kerato-conjunctivitis sicca)と呼ばれる状態を呈します.これら,重症ドライアイの治療と視力矯正には,眼球表面の角結膜に水分を保持し,角化した眼瞼結膜や睫毛乱生から目の表面を守り,不正な角膜をハードコンタクトレンズ素材のレンズに置き換えることにより良好な矯正視力を可能にした強膜レンズが有効です.

因みに,重症ドライアイのみならず,比較的軽症なドライアイでも角膜表面は不正になりますが,これは角膜そのものの形状が不正になるというより涙液層の乱れ(図5)と角膜表面の細胞層(角膜上皮細胞層)の脱落がその原因です.

図5.正常な目とドライアイの目
図5.正常な目とドライアイの目

ドライアイのない角膜の表面は平滑な涙液層で覆われ,きれいなレンズの役割をはたしている.一方,ドライアイの角膜表面は一様な涙液層に覆われておらず(tear break up),平滑なレンズ表面とはなっておらず,乾きの症状に加え視力の低下もみられる(参天製薬ホームページより転載)..

【執筆者】吉野 健一(吉野眼科クリニック 院長)